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精霊王の眷属が精霊、妖精王の眷属が妖精……と分類できてしまえばよかったんだけど……世界樹ユグドラシルの精霊であるグリ達は、鬼王神龍であるミュリエルやアッシュの眷属なんだよなぁ……。
「他の世界ではどうだか知らんが、この世界では精霊も妖精も同じ種族だが民族が違うくらいの認識で問題無いと思うぞ?」
全帝モードになったレイが俺の疑問に気付いたみたいで、俺の頬を指でつつきながら話しかけてきた。
「精霊王のレイオウと妖精王のシルヴァは知っているだろ? 種族を束ねる長としてその上に君臨するのは、音の属性神でもある大精霊王ウィルだ。つまり、いっそわかりやすく種族名を精霊で統一してもいいけれど、理の再構築前から妖精を名乗っている一族もいるから、どっちでも間違いではないってことだな」
創世神話を描いた絵本に、鬼王神龍から与えられた苗木がチキュウの記憶を紡いで物語のカケラを集めながら世界へ広がっていったってものもあったし、物語の描き手ごとに違う精霊や妖精の設定とかも雑ざって再編成された結果が今ってことなんだろう。
「もちもちほっぺなのー」
「ちょ、レイ……地味に痛いからつつかないで」
今の俺も幼児だから、もちもちほっぺをむにむにと指でつつくのはやめてレイ。赤ちゃんも幼児も好奇心旺盛で、五感全てで世界を認識しようとしているのだと前世で聞いたことがあるけれど……。
ゼファーさんは全帝モードや幼女モードに切り替わるレイを見てもあまり気にすることもなく、俺達兄妹の様子を微笑ましげに眺めている。
「つまりー…………高位生命体には、個体識別名が無いことも多い。その名で呼んだ者がいて、呼ばれた方もその名を認めたから定着した、ただそれだけのこと」
「えっと……人間がややこしく考えているだけで、精霊も妖精も、そう認識されているからその名を名乗っている……ってこと?」
「そーゆーことー」
いつの間にか幼女モードに戻ってしまったレイは、『おひるねしてくるのー』と言って、ギルドの受付の奥にある応接室のソファーに靴を脱いで寝転ぶと、〝ボックス〟からブランケットを取り出して昼寝を始めた。
「コウキくんは、レイちゃんと一緒にお昼寝しなくていいのー?」
「今日は、まだ眠くないから大丈夫」
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