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一章/辺境ギルドと保護者達
フォレスティライト王国の辺境にある、神域へと続く森への入り口付近には、数年前にできたばかりの小さな村があって、俺達はその村で暮らしている。
このあたりの地は、今では一応〝村〟と呼ばれる場所ではあるものの、来訪者はあっても定住しているのは俺達家族くらいという辺境の地だ。
「コウキ、レイ、今日は神殿でホーリースライム達から治癒ポーションを分けてもらってきてくれるかな?」
水色がかった綺麗な銀髪を肩くらいの位置で緩く結んでいる青い瞳のおっとり系の美青年――セドリックさんが微笑みを浮かべながら俺達を見据えて告げる。
俺と妹のレイの養父になってくれたセドリックさんは、元S級冒険者で、俺達を保護した後、数年前にできたばかりのこの辺境の村でギルドマスターをしている。
「了解。任せて――」
「おつかい、いってきまーす」
俺の声に途中から被り気味に聞こえた元気な返事……その声の主は妹のレイのものだ。
「レイちゃん、ちょっと待って! 危ないから空を飛んで行っちゃダメ!!」
背中に鳥のような白い翼を生やして宙に浮かんだレイを即座に抱えて慌てて止めている青年はヴォルフさん。彼も元S級冒険者だ。
元々パーティーメンバーだったという俺達の父上殿(セドリックさん)と共に、この辺境ギルドの管理を任されている副ギルドマスターで、俺とレイの保護者の一人でもある。
俺達と出会った頃には中性的な顔立ちだった彼は、成長期を経て身長も伸び、肩にかかっていた一部赤を帯びたオレンジ色の髪も短くして今では爽やか系イケメンな顔立ちになっていて、父上殿と共に、このギルドに訪れる人々などを度々(本人達は意図せず)魅了してしまっている。
金色の瞳を不安で揺らしている鳥人族であるヴォルフさんの背中にも普段は隠している鳳凰や朱雀にも似た炎のような色の双翼が出現している様子から、鳥獣族系が人間へと変化する能力の制御が不安定になってしまうくらい、レイの突然の行動に驚いたことが窺える。
出発を止められて抱えられたレイは少し不服そうだな。
「だいじょーぶ」
「だいじょばないの!」
ぷくっと頬を膨らませて大丈夫だと告げるレイに対して、眉を八の字に下げて即座に返すヴォルフさん。幼女相手に注意しているため、驚いたわりに声量は控えめで大人相手に注意する時よりは口調も語気も柔らかい。
大丈夫ではないという意味で『だいじょばない』と使う人もいるようだが、前世で過ごした剣と魔法の世界ではあまり聞かなかったし、更に前世で過ごしたチキュウで聞いた時にはジェネレーションギャップを感じたものだ。
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