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「キュキュ——ッ!!」
急に体を掴まれてびっくりしたのか、それは甲高い鳴き声を上げると、栗丘の指にガブリと噛みついた。
「痛っっっって!!」
栗丘が痛みに震える手でそれを皆の眼前に差し出すと、胴体を掴まれたままのその白いふわふわの獣は、栗丘の指から滴る血を美味しそうに舐めていた。
「そうそう、この子。『管狐』っていうんだけどね。もともとは私が可愛がっていたんだよ。でも全然懐いてくれなくてねぇ」
「えっ、御影さんのペットだったんですか!?」
返します! と栗丘は獣を御影の前に突き出したが、
「いやいや。その子はもう君に懐いてしまったからね。可愛いから名残惜しいんだけど、私の所にはきっと帰って来てくれないし、他の人間の所に行くことも絶対にないと思う。その証拠にほら」
御影は畳んだ扇子の先で獣の口元を示す。
他の三人が見ると、獣は栗丘の指の傷口を執拗に舐め続けていた。
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