第二章

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  「あやかしは人間の血を好む。そして、人間の血にも色々と種類があるらしくてね。美味しい血と、美味しくない血と、それから、ものすごく美味しい血があるらしいんだ。その美味しさを嗅ぎ分けて、彼らは人間を選り好みする。栗丘くんがあやかしを引き寄せてしまうのは、まさにそれが理由なんだよ」 「それって、俺の血がめちゃくちゃ美味しいってことですか……?」  栗丘は複雑な面持ちで手元の白いふわふわを見つめる。  ペロペロと美味しそうに舐め続ける小動物の姿は愛らしいが、人間の血を求めるあやかしの習性を考えると、ちょっとおぞましい。 「その子はすでに君に取り憑いていて、普段は君を隠れ蓑にしてあやかしの気配を消している。先日の斉藤さんの鬼と同じだね。あんまり上手く隠れるものだから、絢永くんですらその子の気配には気づいていなかったみたいだよ」  御影がそう言った瞬間、わずかに視線を下げる絢永の姿が栗丘の視界の端に映った。 「あやかしが自身の隠れ蓑として選んだ人間のことを、我々は『憑代(よりしろ)』と呼んでいる。だから栗丘くんは、その子にとっての憑代だね」  
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