第二章

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   手詰まりで困惑する栗丘に、マツリカは「そんなこともわかんないの?」と目を細め、小ぶりな八重歯を覗かせて笑う。  その小悪魔っぽい表情がやけに蠱惑的に見えて、栗丘はついドキリと胸を高鳴らせてしまった。 「いい? ミカゲは実力主義なの。たとえどれだけ立場が下の相手でも、実力があると見込めば敬意を表すの。つまり、あんたみたいな下っ端でも『有能で必要不可欠な人間』だと思わせることができれば、あいつは態度を改めるってこと」 「有能で、必要不可欠な人間……?」 「正直、今のあんたは完全になめられてる。ミカゲより実力が上……とまではいかなくても、対等に渡り合えるような人間だと思わせられれば、あいつも手のひらを返すはずだよ」  わかった? と流し目で確認するマツリカに、栗丘は腕組みをしてうーんと唸る。 「でもさ、御影さんはさっき俺のこと、『優秀で将来有望な警察官』だって言ってたぞ。これ以上どうしろっていうんだ?」  真顔でそんなことを言う栗丘に、マツリカは「マジかこいつ」といわんばかりの顔で固まる。  
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