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「えっ。人間の犯罪者でも、放っておいていいレベルってあるんですか?」
さっそく話の腰を折る栗丘に、絢永は鬱陶しそうに眼鏡の奥から苛立ちの視線を送る。
「まあ、厳密にはどんな軽犯罪も無視していいわけじゃないんだけどね。たとえばほら、幼い子どもが『バカ』とか『アホ』とか言ってても、侮辱罪だなんて目くじらを立てる大人はそうそういないだろう? そういうレベルだと思ってくれればいいよ」
説明を聞きながら、そういえばこの講座自体にも『馬鹿』という悪口が入っていたな、と栗丘は他人事のように考える。
「あやかしは自分たちの姿が見えないのをいいことに、こっそりと人間に噛みついてその血を啜る。……正直、たまに見かける小動物程度の大きさのあやかしなら、別に放っておいてもいいと私は考えている。特に有害な菌や毒を持っているわけじゃないし、傷口も大して気にならない程度だし、実際に栗丘くんだって、あの白いふわふわのことは可愛がっているわけだしね」
そんな御影の言葉に応えるようにして、栗丘の胸ポケットに入っていたキュー太郎は「キュッ!」と一声鳴いて顔を出す。
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