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ねえ、当近さんわたしと交換日記をしない?
「ねえ、当近さんちょっとレトロだけどわたしと交換日記をしない?」
わたしの右隣の席に座る美衣佐がこちらに視線を向け言ってきた。
「えっ! 交換日記」
誘われたわたしは本当は飛び上がるほど嬉しかった。嬉しくてそれはもう嬉しくてたまらなかった。
にまにまと笑ってしまうほど嬉しかった。心の中ではとびっきりの笑顔を浮かべているけれど、きっとわたしの表情は変わっていなかったはずだ。
小学生の頃のわたしは勉強もスポーツもできた。周りの友達も優等生ばかりだった。両親からも将来が楽しみだよと期待された。
わたしは、親からの期待に応えたくて一生懸命努力をして自分の実力以上の結果を出そうとしていた。けれど、勉強もスポーツも好きではなかった。
好きでもないことを頑張り続けることは辛すぎて身も心も壊れそうになった。だから中学一年生の二学期くらいから無理して頑張ることをやめた。
全部やーめたと放り投げると肩の力がすーっと抜け楽になり心が軽くなる。そう楽にはなったのだけど、気がつくとわたしは落ちこぼれの部類に入っていた。
そんなわたしの前から優等生だった友達は去って行った。
落ちこぼれのわたしは友達じゃないんだと思うと悲しくなった。
でもいいや。優等生だからわたしと友達でいただけだったんだ。それがわかって良かったと思うことにした。
本当は悲しいけれど。
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