ねえ、当近さんわたしと交換日記をしない?

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 翌朝、わたしは勉強机の上に置いたままにしていた交換日記を通学カバンに詰め込んだ。  書いた内容を読み返そうかなと思ったけれどやめた。だって、読み返すと書き直したくなりそうだから。  階下に降りるとパンの香ばしい匂いがふわふわふわりと漂っていた。昨夜のことがあるのでお母さんと顔を合わせるのがちょっと気まずいなと思ったけれど、勇気を出し木製の扉を開けた。  ダイニングに足を踏み入れるとお母さんがこちらに振り返り「海代ちゃんおはよう」と何事もなかったかのように言った。 「あ、おはよう……」と挨拶をしながらわたしは席に腰を下ろす。  お父さんとお姉ちゃんはすでに朝ごはんを食べていた。わたしに気づいたお父さんとお姉ちゃんが顔を上げ「おはよう、海代ちゃん」とほぼ同時に言った。  わたしもお父さんとお姉ちゃんの顔を見て「おはよう」と挨拶を返した。  お母さんが焼いてくれたトーストとスクランブルエッグとヨーグルトを食べた。トーストを口に運ぶとバターがじゅわーっと染み込んでいてとっても美味しかった。  お父さんとお母さんにそれからお姉ちゃんがいる朝の食卓。この日常は幸せなんだろうなと思うのだけど、何か足らないなとも感じた。  それが何なのかよくわからない。  そんなことを考えながらわたしは朝ごはんを食べた。
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