美衣佐がわからない

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翌朝、玄関の上がり框に座りスニーカーの靴紐を結んでいると、 「海代ちゃん、もうすぐ期末テストだよね? そろそろ試験勉強をするのよ。頑張ってね」と背中の後ろから声をかけられた。 振り返るとお母さんがわたしを見下ろしていた。 「あ、うん。そうだね……頑張るよ」 また、勉強のことかと思い嫌な顔をして返事をする。 「お姉ちゃんは受験勉強を頑張っているのよ。海代ちゃんも今のうちからしっかり勉強をしておくといいわよ」 「……はいはい」 「もう、やる気のない返事だね」 「そ、そんなことないよ。じゃあ、いってきます~」 わたしは急いで通学カバンを持ち逃げるように玄関の扉を開け外に出る。 勉強の話なんてしたくないし聞きたくないよ。 「もう、海代ちゃんってばお母さんの話を聞いているのかしら?」 なんて声が聞こえてくるけれど無視する。 空は晴れているのにわたしの心はどんより曇り空だ。昨日の美衣佐の交換日記の内容も気になるしなんだか憂鬱な気持ちでいっぱいになる。 ついてないな……。わたしは小石を蹴飛ばしながら通学路をあるく。学校に近づいてくると同じ制服姿の生徒達がぞろぞろ歩いている。みんなあの校舎の中に吸収されてしまうんだ。 なんだかつまらないな。でも、しかし、今すぐ大人になったとしてもわたしは何もできない。何者にもなれていない。だから、あの校舎に向かい吸収されるしかないのだ。 そして、お母さんの言うように勉強をするしかない。こんなことで悩めるのも今のうちだけかもしれない。 わたしは、同じ制服姿の生徒達と同じようにあの門を潜ろう。気がつくと涙が零れそうになっていた。それをぐっと堪えわたしは歩き出す。
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