美衣佐がわからない

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あともう数歩で校舎にぞろぞろと吸収されそうになっていたその時、 「当近さ~ん! おはよう~」と元気な声が聞こえてきた。その声に振り返ると美衣佐が立っていた。今日も美衣佐はパッと薔薇の花が咲いたような美しさを醸し出している。 「美衣佐ちゃん、おはよう」とわたしも元気よく返事をする。 「教室の外で会うのは久しぶりだね」 「うん、そうだね」 わたしと美衣佐は肩を並べて門を潜る。こうして並んで歩いていると、ずっと前からの友達だったと錯覚しそうになるから不思議だ。 「ねえ、当近さん、わたし達昔から友達だった気がしてくるね」 「あ、え? そ、そっかな? そうかもね」 わたしが考えていたことと同じようなことを言われたので思わずどもってしまい頬を両手で覆いチラッと横目で美衣佐の顔を見ると凛とした表情でわたしの隣を歩いていた。 この完璧な姿の美衣佐が心の闇を持っているなんて誰が考えるのだろうか。 「うん、なんか当近さんは物凄く近くて遠いそんな存在かな? って思うんだよ」 美衣佐はこちらを向きフフフッと笑った。 それは美衣佐がわたしと距離を置いているからなのではと思った。だけど、それは言わずに「わたしもそう思う」と言って笑ってみせた。 昇降口に入ると下駄箱がすぐにあり、わたしと美衣佐は外履きから上履きに履き替えた。 「今日も一日が始まるね」 「うん、始まるね」 上履きに履き替えたわたし達は並んで廊下を歩いた。そして階段を上り三階の教室へ向かう。 教室の引き戸の前に立つと嫌な気持ちがじわじわと込み上げてきた。
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