美衣佐がわからない

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「あれ? 当近さん教室に入らないの?」 引き戸の引き手に手をかけたまま突っ立っているわたしに美衣佐が不思議そうに聞いてきた。 「あ、うん、入るよ……」 わたしは返事をしながら引き手にかけた手を横に動かしガラガラと開けた。 美衣佐と一緒に登校すると、あの日の美衣佐の笑い声がよみがえってくる。わたしの気持ちなんて気づきもしない美衣佐は、教室に足を踏み入れると、 「おはよう~」とクラス全体に挨拶をした。 「美衣佐ちゃんおはよう~」 「牧内さん、おはよう~」 「おはよう~」 とすでに登校していたクラスメイト達が口々に挨拶をした。このクラスにぱっと綺麗な艶やかな花が咲く瞬間だった。 窓際の自分の席に腰を下ろしたわたしは、通学カバンから筆記用具とそれから交換日記を取り出した。 隣の席の美衣佐は窓際の一番前の席に座っている三竹さんと何やら話している。見たくもない光景だ。 わたしは、二人を視界に入れたくないので通学カバンから小説を取り出し読む。 なかなか面白い内容のミステリーホラー小説だったのでわたしは、のめり込むように読んだ。気がつくと美衣佐と三竹さんのことなんてすっかり忘れて夢中になった。わたしは本の中の住人になっていた。 「あれ? 可愛らしいノートだね」と誰かが言っているみたいだったけれど、わたしは、気にしないで本を読み続けた。
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