美衣佐がわからない

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この日の授業は隣の席の美衣佐が気になり落ち着かなかった。 もしかすると、美衣佐もわたしと同じ気持ちかな。それとも美衣佐のことだからなんとも思っていないのだろうか。 先生が話す授業内容に集中しようと思うけれど、隣の席の美衣佐のことが気になるし、それにさっきの美衣佐の驚いた顔を思い出し後悔してみたり、いやいやでも悪いのは美衣佐だと気持ちがあっちへ行ったりこっちへ行ったりする。 こんな自分自身のことも嫌になる。もう、今日は早く家に帰りたい。早退しようかなとまで考えてしまう始末だ。 隣の席をチラッと見ると美衣佐は先生が黒板に書いた授業内容をノートに黙々と書き写している。 わたしもシャーペンを手に取り美衣佐と同じように先生が黒板に書いた授業内容をノートに黙々と書き写した。 カリカリ、カリカリ、カリカリとノートに書き写す音が鳴る。カリカリ、カリカリ……。 わたしは、ノートに書き写すことだけに集中することにした。カリカリカリカリとノートを取る。 シャーペンをぎゅっと握りただ、ひたすら手を動かしノートに黒板に書かれた内容を書き写した。 気がつくと一瞬美衣佐の存在を忘れることができた。 この日の授業はわたしも美衣佐もひたすら板書を取ることに集中した。カリカリカリカリとノートを取る音が鳴り響いた。 そして、授業が全て終わると美衣佐の机の上に「交換日記だよ」とだけ言ってわたしは逃げるように通学カバンを手に取り教室を後にした。 「と、当近さん、あのね」と美衣佐の声が背中に聞こえたけれど、今日はもう話したくないのでわたしは聞こえないふりをした。
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