美衣佐がわからない

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「さて、美衣佐のことなんだけど……」 お兄さんは空っぽになった海老ドリア皿を横にずらしながら言った。 「……はい」 「当近さん本当にごめんね。美衣佐の奴が……」 「あ、いえ、お兄さんが謝ることなんてありませんよ」 わたしは手をぶんぶんと振りながら言った。 「美衣佐が今度は何をしたのかな?」 お兄さんは眉間に皺を寄せ尋ねた。 「はい、それがわたし美衣佐ちゃんと交換日記をしているんですが……その交換日記のこととこの前話したシャーペン事件の三竹さんのことなんです」 「ああ、シャーペン事件って足を踏みつけられた件だよね」 「そうです。そのシャーペン事件の三竹さんと美衣佐ちゃんのことでちょっと色々あったんです」 わたしはそこまで言ってダージリンティーを一口飲み喉を潤わす。 「わたしと美衣佐ちゃんの交換日記を三竹さんが勝手に見ようとしたんです」 わたしは、先ず。 交換日記を取り返そうとしたこと。その交換日記が三竹さんの顎にパコンと直撃し激怒されたことや美衣佐が止めに入ってくれたことなどをかいつまんで話した。 お兄さんは口を挟まずに頷きながら話を聞いてくれた。 三竹さんとわたしの言い争いが交換日記が原因だったこと……それがわかると美衣佐が。 『あ、うん。わたしそのノートを使って当近さんと交換日記をしてるんだ』 美衣佐は口角をきゅっと上げ楽しそう笑った。その表情が三竹さんに足を踏まれたあの時と同じだったとお兄さんに話していると、またちょっと悲しくなった。 『じゃあ、その交換日記わたしに見せてよ』 『え! それはちょっと困るな……あ、でもどうしようかな?』 三竹さんに交換日記を見せてと言われ困ったと言いつつわたしの顔を試すような目で見てきた美衣佐。 思い出すだけで美衣佐の気持ちがますますわからなくなる。
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