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わたしは机の上にバンッと置かれた交換日記に目を落とす。
まさか、当近さんがあんなに怒るとは思わなかった。本気で真紀ちゃんに交換日記を見せると思ったのかな? 見せるわけないでしょう。まあ、もし見られてしまったら仕方がないけれど。
ねえ、当近さんそれにお楽しみはこれからだよ。
通学カバンに交換日記を詰め込みわたしは立ち上がり教室を出る。
夕日に照らされた街並みがとても綺麗でそして、切ない気持ちになった。
駅に向かい家に帰ろうと思ったのだけど気がつくとわたしはお兄ちゃんが働いているニコニコカフェのビルの前に立っていた。
そして、エレベーターホール近くの空間で通学カバンから交換日記を取り出し読んだ。
「ホラーテイストな絵を描くお父さんが羨ましいのか」
わたしは思わず声に出し呟いてしまった。
あの不気味な絵を前にすると、当近さんもそんな呑気なセリフは吐けないかもしれないね。
それと。
「わたしの心の闇が知りたいか……」
当近さんはやっぱり優しいなと思う。だから憎みたいのに憎みきれないわたしがいるのかもしれない。
わたしは交換日記を読み終えパタンと閉じた。
ねえ、当近さん、わたしの後ろに隠れている秘密をねもう少ししたら教えてあげるね。楽しみにしていてね。わたしはニンマリと笑ってみせた。
すると、お父さんが描いたあの不気味な絵の女性もニンマリと笑った気がした。
あのボロボロアパートの一室で血の付いた包丁をペロッと舐めている。あの絵の女性は誰かを殺したのかな? それともはたまた自分の心をナイフでグリグリとえぐり取ったのだろうか。
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