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「当近さん、美衣佐と距離を置いた方がいいのかもしれないけど、良かったもう少し様子を見てくれたら兄としては嬉しいな……」
「はい、わかりました。きっと、美衣佐ちゃんも色々悩みがあるみたいだし交換日記を三竹さんに見せてもいいなんて思っていないはずですもん。歩み寄れるようにわたし頑張ってみますね」
わたしは、にっこりと笑ってみせた。
「当近さん、ありがとう。励ますつもりが逆になっているね」
「あはは、そんなことないですよ。わたしお兄さんに元気をいっぱいもらっていますから」
わたしとお兄さんはお互いの顔を見て笑い合った。
「じゃあ、また来ますね」
「うん、来てね。俺はもう一杯お茶を飲んでから帰るね。当近さん気をつけて帰ってね」
「は~い」
わたしはお兄さんに手を振り扉を開けた。階段を下りていると上がって来る人がいた。ってあの女の子は美衣佐ではないか。
わたしと美衣佐の目が合った。美衣佐のアーモンドアイの大きな目が見開かれた。
「当近さん来てたんだ。今日お兄ちゃんいないでしょ?」
「あ、えっといるよ」
「え?」
美衣佐の目がより大きく見開かれた。お兄さんのシフトを把握しているのだろう。休みのはずのお兄さんがどうしているのかなと驚きを隠せない表情だった。
「じゃあね、美衣佐ちゃん、また学校でね」
わたしは、美衣佐に怒っていたはずだけど、お兄さんとの約束を忘れたら駄目だなと思い笑顔を作ってみせた。
「あ、うん、明日ね」
わたしと美衣佐は階段ですれ違う。わたしは下へ美衣佐はお兄さんがまだいるニコニコカフェへと。
外に出ると秋の冷たい風が吹いていた。
そして、二階のカフェを見上げると先ほどわたしが座っていた席の窓が見えた。今あの店内で美衣佐とお兄さんはどんな話をしているのだろうか。
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