ねえ、当近さんわたしと交換日記をしない?

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 この日の秋空はとても綺麗に見えた。  水色の海の中にもこもこの綿菓子がぷかぷか浮かんでいるみたいでこの中で泳いだら気持ちいいだろうなと思いながらわたしは、空を見上げた。  通学カバンの中には美衣佐との交換日記のノートが入っている。それだけで嬉しくてこの場で小躍りしたくなる。  授業中も机の引き出しに手を突っ込んでは交換日記があることを確認してしまった。 「当近さん帰ったら読んでね」と美衣佐は言った。 「うん、わかった」とわたしは答えたけれど、その場で読みたくてうずうずした。  ノートにはどんなことが書かれているのかな? もう気になって仕方がなかった。  美衣佐は隣の席になった記念と言ったけれど、何故わたしと交換日記をしようなんて思い立ったのだろうか。  わたしは美衣佐の横顔をちらりと見た。その横顔は頭が小さくて睫毛が長くて通った鼻筋にシャープなフェイスラインともう同性のわたしも憧れてしまうほどの完璧な美人だった。髪の毛も艶々サラサラでとても綺麗だ。  わたしも美衣佐みたいな顔になれたら幸せだなと思いじっと眺めてしまった。 「ん? 当近さんどうしたの?」 「ううん、綺麗だなと思って……」  わたしがそう言うと美衣佐はこちらを見て「えっ? 何が」と目を見開きちょっと驚いたような顔をする。
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