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お兄ちゃんと肩を並べて家に帰る。わたしはカフェの仕事が終わるのを待っていたのだ。これから何年こんな生活が続くのだろうか。
空を見上げるとさっきまでオレンジ色だった空の色はすっかり真っ暗になっていた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん? 美衣佐どうした?」
「さっき、当近さんもニコニコカフェに来ていた?」
「え? どうしてそれを知っているんだ?」
お兄ちゃんは驚きの声を上げる。
「階段の下で会ったんだよ」
わたしはそう言って笑ってみせた。
「あ、そっか。そう言えば当近さんが帰ったあと美衣佐すぐにやって来たもんな」
お兄ちゃんは納得したように首を縦に振る。
「でもどうして当近さんがカフェに来たのかな。偶然?」
「カフェの下で当近さんと偶然会ったんだよ。だから俺が来ませんかって誘ったんだよ」
「ふ~ん、そうなんだね。ふ~ん」
「誘ったらいけなかったかな?」
「ううん、そんなことないよ」
わたしは、お兄ちゃんの整った横顔を見上げながらふふっと笑った。誘うのは問題ないけれど、面白い展開になるかなと声を出さずに呟いた。
「ん? 美衣佐なんか言った?」
「ううん、わたし何も言ってないよ~」
お兄ちゃんとそんな話をしているとアパートの前に辿り着く。ここが我が家なんだと見慣れたボロボロなアパートを眺めた。
「ただいま」
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