Precious Summer Memory Among Us

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 日曜日の今日はたくさんのお客さんで店内は溢れかえっており、気の抜けない状態が続いていた。そのため、休憩時間は至福のひとときだった。私はボーッとしながら机に置かれたカレンダーを眺めていた。  八月。またこの月がやってきた。私は小学六年以前のこの月の記憶がない。    記憶というのは部屋に似ている。記憶するというのは自分が外から持ってきたものを仕舞うこと。思い出すというのは、仕舞ったものを外へと持ち出すこと。きちんと整理された部屋ほどものを探しやすく、散らかった部屋ほどものを探しにくい。    私の部屋には大切なものをしまうための保管庫があった。ある日、私は大罪を犯し、怒った神様が部屋にやってきて保管庫に鍵をかけていったのだ。だから大切なものを取り出せなくなってしまった。 「ねえねえ、千影」  カレンダーを眺めていると横にいた先輩に声をかけられる。顔を向けると彼女は目をキラキラさせてこちらを見ていた。茶髪姿の彼女には一ヶ月経った今もまだ慣れていない。  彼女の握ったスマホ画面は私の方を向いており、画面には『◯◯花火大会』と書かれていた。そう言えば、さっき横で『花火大会に行きたい』みたいな話をしていたなと思い出す。 「この花火大会に行こうと思ってるんだけど、千影もどう?」 「ぜひ、行きたいです! 連れていってください!」  私は特に何も考えることなく、返事をした。先輩からのお誘いだ。これからここでやっていく上で無碍にはできない。だが、承諾したタイミングでミスに気づいてしまった。  日付は来週の日曜日。その日は予定があった。 「あー、ただ、その日ちょっと昼に予定があるので、私だけ現地集合でもいいですか?」 「了解。じゃあ、着いたら連絡してもらっていい? それで集合場所決めよう」 「はい。わかりました」  なんとか軌道修正できて良かったと安堵する。  来週の予定は絶対に外すわけにはいかなかった。  そうだ。せっかくの花火大会なんだから浴衣でも着ていったら喜んでくれるに違いない。    時刻を見るともうすぐ休憩終了時間だった。  私はロッカーにスマホをしまって準備を始めた。
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