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『ドアが閉まります。ご注意ください。』
車掌のアナウンスを聞いたのは、
ちょうどホームに着いた時だった。
7時48分発の電車。
すでに車両の入り口まで満杯に人が乗っていた。
しかし、これに乗れなければ始業に間に合わない。
何が何でも乗る。
駆け込み乗車は危険だと分かっていてもしなければ間に合わない。
いつもなら
決まった場所のドアから乗るのだが、
今日は仕方なくすぐ近くにあるドアから車内へと駆け込んだ。
溢れるほど人がいないのは幸運だった。
ピルルルルー
ドアが閉まると、俺はそこにもたれ掛かった。
通勤ラッシュというのはストレスが溜まる。
溢れるほどいないとは言え、満員と言えるほどの車内で何とかドア付近を確保できた。
「ふぅ〜」
無事に乗ることができ、つい安堵の息がもれる。
さて、理那は大丈夫だっただろうか?
心配になったのでスマートウォッチから理那へメッセージを送った。
ここから職場の最寄り駅までは30分。
快速ならもっと早く着くがこの電車でないといけない理由がある。
しかし今日は乗るタイミングとドアがいつもと違う。
多分無理かもしれないな、と思っていた。
残念な気持ちでろくに見もしない外の風景を眺めていると
理那から返事が。
どうやら大丈夫そうだ。
また返信しようと手首の画面に夢中になっている間に次の駅に着いてしまった。
たくさんの人が乗ってきて中へ中へと押し流されていく。
何とかその流れから脱出すると、ドア付近の居場所を確保した。
ほとんどの人は
俺が降りる職場の最寄り駅よりも3駅向こうのオフィス街がある駅で降りる。
最寄り駅で降りるのは俺ぐらいなので
今のうちに降りれる準備をしておくのだ。
理那への返信も無事に済むというとき、
サッと、一瞬何かが股間に触れた。
顔をあげると、前には背の高い女がいた。
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