再会

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10. 興味って何。 そう言おうと思ったのに、何でか、 「和泉秋野…」 名乗ってしまった。 「イズミ、アキノ?どっちが名字か、わかんないな」 よく言われる。 「光成高校でしょ?何年?」 「…3年」 …ジャージで学校までバレてた。 「そっちは?」 別に知りたいわけじゃないのに、自分だけ名乗ったのが納得できなくて訊いてしまう。 「俺?加藤冬馬。緑高校3年」 まさかの同級生だった…。 急に距離が近くなった気がする。 敬語じゃなくていいってことか。 「カトウトウマ?」 「そう。冬馬は冬の馬、ね」 「和の泉に、季節の秋、野原の野」 「ふぅん…秋と冬だなぁ」 「………」 何でちょっと嬉しそう? そういう笑い方なら、こっちも警戒しないのに。 変なの… 毒気を抜かれた、というか。 それでつい、言ってしまった。 「何でわかった?」 「ん?」 「男じゃないって」 「あ~、それ…」 どうせなら今後のために聞いておきたいと思った。 来週も再来週も、予約が入ってるし。 「声?」 バレたとしたらこれだろって思って言ったら、 「声、よりも…」 「?」 「全体的に、今日は女に見えたよ」 しれっと言われてしまった。 「え…ほんとに?」 「うん。前は男だと思ったんだけどな」 「へぇ…」 あの時は女なのを隠そうとしてなかったのに。 今日は男のふりをしてたのに、女に見えたって言う。 ジャージだったから? だとしても、疑似とは言えデートにジャージはないだろうし。 加藤冬馬の答えは全然参考にならなかった。 「つーか、俺も聞きたい。秋野は今日何やってたの?」 足を止めたまま、路上で話し込む態勢になる。 さらっと名前呼びされてるのも気になるけど。 「…それ、言う必要ある?」 「うん。ないけど知りたい」 「………」 こいつ。 こっちが言いたくないのをわかってて言ってる。 しかも大して意味もない、ただの興味で。 無視して歩きだそうかと思ったら、動きを読んだ相手がさり気なく行く手を塞いだ。
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