再会

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12. 「腕、離してよ」 「嫌」 「………」 何でだ。 「秋野、俺と付き合おうよ」 徐ろに、加藤冬馬が言った。 「嫌」 反射的にそう言い返したら、 「え、何で?」 きょとんとしやがった。 「何でも何も、こっちのセリフなんだけど」 「何が?」 「何で?」 「何が?」 「いや、付き合おうって何!?」 掴んだままで離そうとしない左肘をぐっと引いて、言い放つ。 付き合おうって? 自慢じゃないけど、異性からそんなことを言われたのは初めてだった。 言ったこともない。 でもそれは、誰かが誰かを好きになった時に言う言葉であって。 決して、興味本位で軽々しく口にするようなものじゃないはずだ。なのに、 「そのままの意味だけど?」 加藤冬馬は悪びれずにそう答えた。 「俺、秋野と付き合いたい」 「!?」 「あ、今生まれて初めての告白したよ」 したよ、じゃないよ…何笑ってるんだ。 「いや、そんなの聞いてない…、本当に、何いってんの…?」 大丈夫なのか、この男… こうなるとうっとおしい、苛つくを通り越して少し怖くなってきた。 結局腕、離さないし。 「いい?」 そんな、楽しそうな顔で言うところか? 「…よ、良くない」 「え、何で?」 何でって。 「私はあんたのこと全然好きじゃない」 こういうのははっきり言わないと駄目な気がして、必要以上にきっぱり言い切った。 言われた方は2回瞬きしてからあっさりと、 「そっか」 と言った。そして、「じゃぁ、好きになればいいってこと?」と続けた。 好きになれば?って、私が加藤冬馬を好きになればってこと? 好きに…なる?
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