再会

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14.  加藤冬馬の完璧に左右対称なくっきり二重の目が、穴が開くんじゃないかと思うほど私の顔を見る。そして、 「わかった」 と言った。 急に聞き分けが良くなったらこっちが戸惑う。 「…本当に?」 「迷惑を掛けたのはわかったよ」 「………」 「いつも言われる…生意気とか、自分勝手とか。…ごめん」  誰にと思ったけど、もうそんな返しも面倒くさい。  今は笑ってないし、しゅんとしてるから、自分の非を認めたってことなんだろう。 ていうか、ちゃんとごめんが言えるのが意外だった。 「それじゃもう帰っていい?疲れたから」 ため息交じりにそれだけ言ったら、 「いいよ。…送るけど」 ぼそっと言われて、イラッとした。 「だからさぁ…」 「駄目。夜道で女の子だろ」 またこれ。 しかも、譲らないと言わんばかりの強い口調。 さっきのしおらしさはどこに行ったんだ。 「女に見える!?」 「見えるって言ってるじゃん」 「どこが!」 「どこもかしこも!」 言い争ってたら。 「おいおい、兄ちゃんたち〜。喧嘩すんなよ〜」 通りがかりの酔っぱらいサラリーマンに言われてしまった。 「ほら」 まだ人通りは多いので、小声になる。 「…ほらって?」 「兄ちゃんたちって言ったじゃん…」 「………」 「…それに家、知られたくないんだけど」 「え…」 何でショック受けてんの。 「俺、そんなに嫌われてんの?」 「好かれてると思ってるの?」 「いや、そうは言わないけど…」 そこまで?って繰り返し訊かれたら、こっちもそこまででもないような気もする。結局、 「そこまでじゃないけど…」 と口ごもってしまう。 「じゃぁ」 あぁもう。 「わかったよ、途中までならいいよ」 「途中…?」 「…文句あるの?」 「…ない、です」 そんなわけで仕方なく、一緒に歩き出した。
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