再会

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15. 「ここまででいい」 「ん…。あとどれくらい?」 「すぐそこだよ」 アパートの1本手前の通りの交差点。 「ふぅん…」 いまいち納得してなさそうな加藤冬馬が、仕方なさそうにため息をついた。 「秋野、番号とアドレス交換しようよ」 言うと思った… 「何で?」 「また会いたいから」 「………」 付き合いたいとか、会いたいとか。 本気なんだろうか。 誰かにこんなふうにされたこと、今まで一度もないんだけど… 黙っていたら誤解したみたいで、加藤冬馬が気まずそうな顔をした。 「秋野はもう会いたくない?」 そう訊かれて考えたら。 別に会ってもいい。 そう思ってる自分がいる。 夜風にあたりながら黙って歩いてきたから、頭もだいぶ冷えていた。 「そんなことないけど…」 「ほんと?」 一瞬で嬉しそうな顔になるから、慌てて言った。 「でも、いろいろ訊くのはやめてほしい…」 知られたくないことは誰にだってあるはずだ。 「わかった。じゃぁアドレス…」 「ねぇ」 「ん?」 「なんで、付き合いたいって言ったの」 こんなことを訊いていいのかどうか、よくわからないけど。 率直に、知りたかった。 「言いたくなければいいけど…」 一応そう言ってみる。 「いや、平気」 平気なんかい… 加藤冬馬は平然として、 「一言でいうと興味があるから」 そう言うのだった。 「え、…興味?」 「そう、俺のこれまでの人生で周りにいなかったタイプだから、何となく面白そうだと思って」 うわぁ…、何だか失礼なことを言ってる。 でも本人はそれに気づいてないっぽい。 「そういうの、近くで見るためには付き合うのが手っ取り早いかなって」 思ったんだよね、って言ったって。 「………」 返す言葉もない。 ていうか。 「それって友達じゃ駄目なの?」 友達なら別に、今すぐなったって構わないのに。 でも、「うん」と頷いた加藤冬馬は、 「友達とはキスしないじゃん」 と言った。 「…何だって?」 今、キスって言った? 「俺、秋野とキスしたいから」 それって友達じゃないよね?と、真面目な顔で言う男を宇宙人を見る目で見つめてしまった。
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