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秋野
1.
日曜日の朝、メッセージを送ってみた。
『次の週末、ひま?』
返ってきたのは、
『土曜日の午後だけ用事がある』
だった。
昨日の反応だと、ひまじゃないって即答されるかと思ったんだけど。
まぁ、真面目っぽいしなぁ…
修くんにシフトを相談してみようと決めて、家を出た。
見つけたのは映画館のロビー。
映画を観終わって、出口に向かっている時だった。
人混みの中で見つけられたのは行幸。
バレンタインの日にバスに乗り合わせて、成り行きでチョコレートをあげた高校生だとすぐに気付いた。
男だと思ってたら自分のことを「私」と言った。
男なんだか女なんだか不明のままバスを降りて行ってしまい、それきりすっかり忘れていた。
こんなところで会うなんて、とは思ったけど。
ジャージで隣の高校の生徒なのはわかっていたから、生活圏が被っていてもおかしくない。
咄嗟に思ったのは、やっぱ女じゃん、だった。
背は高めだし髪も短いから、一見男に見える。でも、白いパーカーの下の赤と青のチェックシャツの襟元から見える首が細いし、喉仏もない。
前はジャージだったから分かりにくかったけど、今日みたいに私服だとわかりやすかった。ボーイッシュな服装なのはそういう趣味なんだろう。
せっかくだから声を掛けようと思って近付いた。
俺のことを覚えてないかもとか、その時は考えなかった。
そしたら、隣に女の子がいて手を繋いでた。
ちょっと驚いたのは、雰囲気がデートっぽかったから。
友達同士って感じじゃなかった。
女と女でデートしてる。
そう見えた。
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