悪い奴と優しい奴

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2.  休み明けの月曜日は何となくだるい。 18になったばかりなのに、そんなことを考えながら廊下を歩いていたら、担任に呼び止められた。 「和泉、ちょっと」 「…はい」 担任の川ちゃんこと川島先生は、30代半ばのいかにもな熱血タイプだ。 一人ひとりをよく見てくれるのはいいけど、たまに面倒くさい。  職員室の隣の相談室で、望んでない進路指導が始まった。 「どうするか決めたのか?」 「…働きます」 って、毎回言ってるんだけど。 「どこで」 「………」 「求人、全然見に来ないじゃないか」 「すみません」 普通高校に入る求人はあまり多くない。 そもそもきちんと就職する気もないから、見にも行ってない。 「和泉。悩んでるなら話聞くから」 言ってごらん、と言うけど。 先生に言うようなことは何もなくて。 悩んでいるのかどうかもよくわからないし。 「何か困ったら、言います」 そんな言い方になってしまった。 「…困る前でもいいんだぞ」 「はい…」 「お前はしっかりしてるから大丈夫だと思うけど。危ないことはしてくれるなよ?」 そう言われて、内心ギクリ。 同じ高校生相手に、男役でデートしてお金もらうのは危ないですか? とは、聞けないよなぁ… 「はい。わかってます」 「…うん。それじゃ、また話そう」 「ありがとうございました」  相談室を出て教室へ戻ったら、美環がカバンを持ってこっちへ来た。 「ノート出せた?」 「うん」 「帰る?」 「うん。美環はもういいの?」 「いいよ。待ってる間のおしゃべりだっただけ」 美環はそう言うけど、向こうはまだ話したそうだけどな… 教室の真ん中からこっちを見てるクラスメイト。 須崎くんは、元サッカー部のエースだったような。
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