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3.
「で、加藤冬馬って誰なの?」
校門を出るなり勢い込んで訊かれて、
「2月の練習試合の帰りに…」
美環に全部話した。
休み時間に途切れてしまった会話は、その後も選択授業や移動教室で続きを話せていなかった。
別に、そんなに大した話でもないんだけど。
ただ、キスしたいと言われたとかは言いにくくて、友達になっただけのような話になってしまった。
お腹が減った状態で乗ったバスで、隣に座った人が持っていたチョコをくれた。向こうはこっちを覚えてて、土曜に街で見かけて声を掛けてきた。
そんな話。
美環の反応は、
「へぇ~?」
だった。
嘘を見破ってるわけじゃないけど、何となく納得してないような。
そんな感じ。
鋭いんだよなぁ…
「おでんの次がケーキバイキング?」
「そう」
「食べ友なの?」
「あー…、そう、かもね」
食べ友だか何だか。
私だって、加藤冬馬が何なのかよくわかってない。
付き合いたい、キスしたいと言われただけ。
これって本当、何なんだろう…
「どんな人?」
「どんなって?」
「格好いい?」
「う~ん…」
男前なのは確か。
でも、中身がかなり変。
それって格好いいって言うんだろうか。
「ちょっと変わってるけど、親切な人だよ」
たぶん。いや、ちょっとじゃないかな…
でもあの時チョコをくれたし、確か空席も教えてくれたんだった。
おでんも奢ってくれたし。
あ、お礼を言わなかった…
「ふうん…でもさ、ケーキバイキングに誘うって意味深じゃない?」
「え、そうなの?」
「そうだよ。何とも思ってない相手は誘わないと思うよ」
「………」
美環の言ってるのは、好きかどうかってことなんだろう。
好きとは言われていないし、面白がってるだけだと思うけど…
うまく言えずに黙っていたら、
「秋野はそいつが好きなの?」
そう訊かれた。
「まさか。そういうのじゃないよ」
「…でも、ケーキ一緒に食べるの?」
「食べるよ。ケーキは好きだし奢りだもん…」
「…秋野。お菓子くれても、知らない人にはついてっちゃ駄目なんだよ?」
…それは知ってる。
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