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3.
翌日。
待ち合わせの改札で、聞いていた通りの容貌の女の子と手をつないだ。
相手は私よりも10センチ以上背が低くて、手も小さかった。
「今日はよろしくお願いします…っ」
緊張しているみたいで顔が赤い。
異性とのお付き合い経験無し。
好きな人はいる。
告白する前に誰かとデートしてみたい。
確かそんなだった。
この子はデートするとしたら、こういう服を着るわけだ…
白いシャツワンピースの上に、ブラウンのファーベスト。ミドルブーツもブラウン。長い髪をおしゃれな三つ編みにして両肩に垂らし、メイクは薄いけど赤みの強いグロスが白い肌に映えている。
可愛い、と思った。
「うん、よろしく。アキって呼んで」
いつものように、なるべく声を低く、言葉は短く。その方が男っぽく見えるらしい。
「わ、私は」
「カナさん、だよね?」
「は、はい」
緊張してるな〜…
「お昼、そこでハンバーガーでもいい?」
ちょっと豪華なハンバーガーなら、デートでもありなのかなと思って提案してみた。
「はい、何でも…」
カナさんは、もじもじしている。
「行こ?」
「は、はい…」
手を引いて、バーガーショップに向かって歩き出す。半歩分くらい後ろを歩く彼女に、
「映画は何が観たい?」
と訊いたら、
「あ、じゃぁ…」
カナさんが観たがったのは、話題のラブストーリーだった。
食事をして、映画館に入り、手をどうしようか迷って、率直に「つないどく?」と訊いたら頷いたので、そのまま2時間つなぎっぱなし。
「ごめんね、手汗が…」
映画が終わって外に出てから、最初に言ったのがそれだった。
失敗したと思ったけど。
カナさんは首を振り、
「私もすごかったので…」
と恥ずかしそうに言った。
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