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9.
「お互い制服だと変な感じだな」
ぼそっと、加藤冬馬が言う。
今日はあんまり喋らないから、そっちの方が変な感じだった。
並んで歩いているのも含めて違和感が凄い。
緑高校の制服は少し変わっていて、ベージュのブレザー、ダークブラウンのスラックス。シャツは薄い水色で、学年によって色の違うタイかリボン。
うちのは黒のブレザー、グレー系のチェックのスカート、白いシャツにワイン色の細いリボン。男子はボタンで止めるタイプの簡単なタイ。
「光成のって頭良さそうに見える」
「制服が?」
「うん。友達がそう言ってた」
「緑高校のはお金持ちそうって言われてるよ」
言ってたのは美環だけど。
「あぁ、それけっこう言われるんだよ。私立っぽいとか。制服でそんなの可笑しいけど」
お坊ちゃまっぽいとかね、と言って笑う。
その横顔を見ると、今日の加藤冬馬は自然な感じでリラックスしているように見えた。
さっきまではちょっと堅かったけど。
「加藤、冬馬?」
「ん?てか、何でフルネーム?」
「何て呼んだらいいのかわからないから」
加藤、は偉そうだし、冬馬、と呼ぶほど仲が良くもない。
「冬馬でいいじゃん。俺も秋野って呼んでるんだし」
「加藤くん、は?」
「それ、秋野のキャラじゃない気がするけど」
「………」
どんなキャラだと思ってるんだか。
「冬馬って呼んでよ。俺はそっちのがいい」
「冬馬?」
口にすると少し抵抗があるけど、本人が言ってるんだからいいのかも。
「そうそう」
嬉しそうだし。
もうこれでいいか。
「アイス、どこに食べに行くの」
途中、広い通りを横切って細い路地を抜けていた。
知らない道を歩いている。
「あ、もうすぐそこ」
冬馬のその言葉の通り、歩道沿いに小さなお店があって、そこが目的地だった。
「こんなところに…」
全然知らなかった。
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