悪い奴と優しい奴

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12.  冷たくて甘い、ホワイトチョコ味のジェラート。 「美味しい…!」 ホワイトチョコが濃くて、真っ白だから一見わからないんだけど、チョコ自体もゴロゴロ入っていた。 ちょっと感動ものの美味しさだ。 「それは良かった。秋野って、ホワイトチョコレート好きだよね?」 「うん」 チョコレートは何でも好きだけど、1番好きなのはホワイトチョコレート。 「何でわかった?」 「俺があげたトリュフも、迷わずホワイトチョコのを選んでたから」 そうだっけ…? 「よく覚えてるね」 あんな、10分くらいの同席の時のこと。 「うん。俺、記憶力いいからね」 「………」 こっちがすぐ思い出さなかったから、嫌味かな? そんな穿った見方をしてしまう自分が少し嫌だ。 「そっちは?美味しい?」 話題を変えようと思って、冬馬の前の二段に盛られたジェラートを見た。 確か、バニラとマロン。 「うん。食べる?」 「え…いいの?」 「いいよ?」 テーブルの真ん中まで差し出してくれる。 いい奴… 「いただきます」 ペコっとしてから、自分のスプーンでマロンジェラートを一口分掬った。 「………」 美味しい…! やっぱりこのお店の、全部食べたいかも。 「どう?」 「ん、すごい美味しい」 「だよね。バニラは?遠慮しないで食べなよ」 笑顔で勧めてくれるけど。 何か、流石に悪い気がしてきた。 奢ってもらってるのに、人の分まで食べるって… 「いいよ。自分で食べなよ」 「何で?食べたいでしょ?」 「食べたいけど…あ、じゃぁこっちのも食べていいよ」 ホワイトチョコのを差し出してみる。 と、冬馬が嬉しそうな顔をした。 「じゃぁ交換ね。いただきます」 カップ自体を交換して、それぞれ食べて。 「…バニラも美味しい」 「これもいけるな」 結局全部が美味しくて。 順番に食べたい感じ。 と、思った瞬間に、 「もうさ、真ん中において一緒に食べる?」 冬馬がそう言った。 「順番で食べたくない?」 うわ、同じこと考えてるじゃん。 「う、うん」 「よし、ここに置いて」 真ん中にカップ2つを並べて置いて、二人でタイミングをずらしながら順番に食べた。
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