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4.
近くのコーヒーショップでいいと言うので、そこに入ってコーヒーを飲みながらおしゃべりをした。
カナさんは季節限定の甘そうなラテとドーナツ、私は本日のコーヒー。
甘いものは好きだけど、デートの時は口にしないことにしている。その方が「アキ」らしい気がするから。
「アキくんは…すごくかっこいいですね」
もう3時間以上一緒にいるのに、カナさんはまだ緊張しているようで、あまり目が合わない。
「そう?」
「はい」
「どこが?」
「それは…、背が高いし、顔も綺麗だし…」
背はともかく顔、か。
母にはあまり似てない、たぶん父似のこの顔。
と言っても、写真も何もないから父親の顔は知らないのだけど。
「綺麗?」
覗き込むように角度をつけて尋ねたら、気配で顔を上げたカナさんが赤くなった。
「は、はい。そう思います…っ」
綺麗な顔、ね。
でもきっとカナさんの好きな人とは違うタイプだろう。
こんな、この先何の役にも立たなそうな勘だけが鋭くなっていくことに、頭の何処かで警報が鳴ってる。
こんなの、良くない。
でも同時に思う。
いいじゃない、需要と供給だよ、と。
「カナさんは可愛いね」
そう言ったら、彼女は目を見開いてこっちを見た。
「本当ですか?」
「うん」
本当に、可愛いと思う。
その潤んだ目とか、シュガードーナツが似合うふんわり甘い雰囲気とか。ちゃんと女の子で、好きな人のために努力してるんだなとわかる。
「私、片想いしてる人に、告白したくて…」
「そっか…頑張って」
「…はい」
コーヒーとドーナツを食べ終わったので、ショップを出て駅へ向かうことにした。
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