俺のこと

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9.  お弁当2つを手に取って、考える。 幕の内的なやつと、チキン南蛮弁当。 完全に俺チョイス。 食べられないものはないと言っていたから、何だっていいはず。 でも女子ってどれくらい食べんの…?  デートの時はカフェやファミレスに入って食べることが多くて、コンビニ弁当を一緒に食べたことはない。 よくわからないけど、こんなボリュームのあるやつじゃまずい…ような気もする。  いや、でも今日はデートじゃないし? 手もつながせてもらえなかったし。  何となく、秋野はぺろっと食べそうな気もする。確か、おでんも俺と同じくらい食べてたような。 でもやっぱり、おにぎりとかサンドイッチの方がいいのか…?  それらが並んだ隣の棚を見て考えるけど、温かいものの方がいい気がして。  てか、あの部屋には電子レンジもなかった… 「そうだ」  思いついて、脇の方に置かれたインスタント味噌汁のカップをかごに入れた。 鍋があったからお湯は沸かせるはず。  甘いものは、と一瞬考えたけど、今日はジェラートを食べたしやめておくことにした。  あの冷蔵庫。食に興味がないのが丸わかりだった。 お母さんが亡くなって一人暮らし。 お金の事情で引っ越した。 え、食うに困ってる…てこと?  レジで会計しながら自分の考えにドキッとして、慌てて変な考えを振り払った。 まさか。 だってこのご時世だぞ。 でも。 食べ物に釣られるのって、そういうこと? 居ても立っても居られなくなった俺は、 「あの、ちょっと買い足してもいいですか?」 「え…、どうぞ」  後ろに客がいないのをいいことに、あとレジのお姉さんが俺の顔をチラチラ見てるのにつけ込んで、わがままを言った。  後ろのパンの棚から適当に選んだのを10個くらい、かごに放り込む。 「一緒で」 「は、はい」  こんなことありがた迷惑かもしれない。それどころか同情したと思われてまた怒るかも。 いや、でも食べ物だし素直に喜ぶかも…?  レジを通過するパンを眺めながら考える。 さりげなく、お弁当だけじゃ足りないと思って、って言ってみるとか…? いや、いくらなんでも10個は食べないだろ… 「あぁ…もう、わかんね〜…」 秋野という人間が、こうも読めないとは。 「え?」 俺のぼやきに、お姉さんが反応してしまった。 「あ、なんでもないです。でもお弁当は温めて下さい…ごめんね?」 「え、いえ、大丈夫ですぅ…」 こういうのはできるんだけどなぁ…
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