俺のこと

13/17

1906人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
13.  秋野は、食べ方がきれい。 あんな性格なのに、繊細な箸使いをする。 亡くなったお母さんに教えられたんだろうか。  向かい合って、床に座って、お互い胡座で。 食べながら考えた。 「秋野」 「ん?」 「あのさ…」 「うん」 もぐもぐする顔に、俺のことを警戒している様子は全くなくて。 子犬が野良猫になったと思ってたけど、その野良猫に猫缶あげたらちょっと懐いた感じ…?  いろいろ訊くなと刷り込んだのは、まだちゃんと頭にあるけど。 訊く、以外に会話のきっかけもない俺達。 当たり障りのなさそうなことなら大丈夫なんだろうか、とか考えて。 「彼氏いたことある?」 訊いてみた。 「ない」 「ふぅん…」 まぁ、だと思ったけど。 ていうか、会話終わったわ… と思ったら、 「冬馬は?」 訊き返された。 「俺は…」 「あるでしょ?」 「あ、うん…」 そうくるとは思ってなくて、何故かドキッとした。しかも、 「何人くらい?」 なんて思いの外、突っ込んでくる。 「え、えー…5人、くらい?」 うそうそ、もっといる。 でも引かれそうで、本当のことが言えない。 「へぇ」 秋野は、訊いた割には興味がなさそうな返事をして、カップ味噌汁に口を付けた。 「美味しいね、これ」 「そう?」 「うん」  結局、秋野は茄子のが食べたかったと言って、俺のと交代したんだけど。  喜んでくれたなら良かった、とほっとするあたり。 俺はもう、けっこうこいつにはまっている気がする。  食べてる口元を見てると、やっぱりキスしてみたい気持ちが湧いてくるし。 胡座なのにぴんと伸びてる背中とかも、何かいいなと、思うし。 ついでに。 さっき、お腹。すっごい綺麗だったんだよなぁ…  女の子のお腹、今まで山程、は言い過ぎだとしてもけっこう見てきたと思うんだけど。  きゅっと引き締まってて、すべすべしてそうな。それでいて、下に筋肉がついてるのがわかる感じの、ほんとに綺麗なお腹だった。  俺は、フェチとか特にないはずなんだけど。  触ってみたいとこんなに強く思ったのは、初めて。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1906人が本棚に入れています
本棚に追加