土曜日の憂鬱

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4. 『いいよ』 「えっ…いいの?」  思わず液晶に訊いてしまった。  日曜日のケーキバイキング、友達も一緒に行きたいと言ってるとメッセージを送ったら。 さも、気にしないよ、みたいな返事で拍子抜け。 「いいのか…」  スマホを手にしたまま、歯ブラシを戻してタオルで口元を拭いた。  冬馬がいいと言うなら、私もいいんだけど…  朝のこの時間に、冬馬とメッセージのやり取りをするのが定番化しつつある。 ちなみに昨日は、 『朝ごパン、何食べた?』 ときたから、 『コロッケパン』 と返して、 『朝から揚げ物はヘビーじゃない?』 と訊かれ、 『いや、いける。冬馬は?パン食べた?』 からの、 『親子3人で食べ尽くした』 で終わった。  親子3人。 お父さん、お母さん、冬馬、かな? でも何となく、下がいそうな気がする。 この前だって、お弁当食べ終わったらササッと片付けてたし。  冬馬は何ていうか、手際が良い。そして、ネクタイのことといい、面倒見も良い。 お兄ちゃんぽい。 お兄ちゃんいたことないから、知らないけど。 優しくて格好いいお兄ちゃん、いたらいいなと思わなくもない。 だって、シワになるから先に、なんて。 高校生男子が考えることなんだろうか。  ポン、と音がして。 液晶に目を落としたら、 『バイキングの店、電車で二駅なんだけど、また駅集合でいい?』 ふーん… 本当にいいんだ。 二人で、じゃなくても。 それなら私だって、別にいい。 嫌って言われたら何て返そうかなんて、余計なことまで考えたけど。 別にいい。 「いいよ…何時にする?」  ぶつぶつ言いながら、送って。 スマホを机の上に置いて。 制服に着替えた。
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