土曜日の憂鬱

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5.  ホームルームで、文化祭の催し物の係分担を決めた。  また寝ているうちに、宣伝兼呼び込み係を拝命していた。 もう一人は… 「一緒だな、よろしく」 「うん、よろしく」  須崎くんは、目の前に立つと案外背が高くて、172センチある私がちょっと見上げるくらい。  冬馬と同じくらい…? でも冬馬よりもガタイがいいというか、厚みがある、感じ。 「ていっても、和泉ずっと寝てたよな?」 「あー…、うん」  見られてたのか…  お昼を食べると眠くなってしまって、それでも授業中は起きてられるけど、ホームルームになると寝てしまうことが多い。 「でもわかるよ。この時間は眠いよな…」 「うん。気付いたら寝てるんだよね」 「ま、適当に決められちゃったけど、最後の文化祭でみんな張り切ってるから。俺等も頑張ろ」 「そうだね」 「じゃぁまた来週な」 「うん」  手を振って教室を出ていく須崎くんを見送って、自分の荷物もまとめる。  今日、美環は学校を休んだ。 朝、冬馬とメッセージのやり取りをしたあとで、美環から電話があって。 風邪気味だから休む、学校には連絡したと言った。  帰りに寄ると言ったら、移したら困るから来なくていい、と。 言われてしまった。 たぶん、風邪じゃない。 昨日のことが気まずいのかもしれない。  人前で泣くような子じゃない美環が、教室で、私の前で泣いたこと。 心配だからの一点張りだったけど、改めて考えると何かおかしかった。  冬馬のことを直接知りもしないのに、聞いた話だけで遊び人とか、かなり悪く言っていたけど。 そんなふうに、一方的に決めつけるような言い方を、今まで美環がするのを見たことはない。  もしかしたら、自分が知らないだけで美環に何かあったのかも…帰ってから、電話してみようかな? そんなことを考えながら、アパートに帰ると。 玄関の前に誰かいた。 シン、だった。  
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