土曜日の憂鬱

9/18

1909人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
9.  中に入ったら、スタッフの人が先に廊下を歩いて会場へ案内してくれた。  レストランの中は、外装と同じくモノトーン系の内装。 大理石調の床は黒、腰の高さくらいまでの壁紙がグレー、そこから上は天井含め白という、グラデーション仕様。  モノトーンでも雰囲気がさみしくならないのは、真っ白いテーブルに飾られた豪華なアレンジジメントがあるから。 赤、黃、橙、濃い桃色、南国を思わせる華々しい植物の明るい色が際立って、いかにもセレブな若者が好みそう、な感じ…?よくわからないけど。  いくつかのテーブルに料理、飲み物、グラスや食器類が用意されていて、所々に担当のスタッフぽい人がいて。基本はフリースタイルで飲食できる様子だ。  ざっと見ただけで30人以上、同じようなセミフォーマルの服装をした男女がいて、それぞれ手に飲み物などを持ってあちこちで話をしている。 個人もいれば、寄り添うペアもいた。 「アキくん、ドリンクどうする?」 隣から訊かれて、はっとした。 「もらってくるよ。サヤカさんは何がいい?」 「んー、フルーツティーにしようかな」 「わかった」 「私、先に主役のとこに行ってるね。後から来てね」 するっと手を離して、サヤカさんが奥へ向かった。  ドリンクスタンドみたいなテーブルの横に、ウェイターっぽい男性がいる。 近付くと、 「何になさいますか?」 と訊いてくれた。 「フルーツティーと…、ジンジャーエールを下さい」 「かしこまりました」  慣れた手つきですぐに用意されたドリンクを両手に持って、サヤカさんを探す。 確か、先に主役のところに行くと言ってた… さっき歩いて行った奥の方を見ると。 一番奥の大きなソファの中央に座っている女性が、主役らしいのがわかる。 長い黒髪、光沢のある青いドレス。 ドレス…?ドレスだな。 ほんと、セレブってすごい。 これもまた、高校生?って感じの大人っぽさだけど。 よく見たらみんなそんなだし。 私だって、女子高生には見えてないだろう。  主役の女性のソファの横、コの字の右側に当たるソファにサヤカさんがいた。 楽しそうに笑ってる。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1909人が本棚に入れています
本棚に追加