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7.
どこに行くのかと思ったら。
まさかの、おでんの屋台…
ドラマでしか見たことのないような、いかにもなやつ。
カウンターの向こうでグツグツ煮えてるおでんと、それを時々箸で突く、つるっとしたお爺さん。
なんでこんなことに…?
屋台の脇の赤い提灯を見上げていたら、
「はい、大根」
と、お爺さんがカウンターに2つお皿を乗せた。
「いただきまーす!」
隣の男はすごく嬉しそうにそれを手にとって、1つを自分の前に、もう一つを私の前に置く。
割り箸をパキンと割って、大根を4つに切り分けて、ひとかけを口に運ぼうとして。
思い直したようにふうふうと吹き冷まし始めた。
ひとしきり吹いてから、バクっと食べて。
「…っ、……、……」
やっぱり熱くて目を白黒させた挙げ句、左手で口元を覆って忙しなくもぐもぐしている。
やっと飲み込んだと思ったら、
「うっま!!」
大きな声でそう言った。
「ははは、ありがとうな。お兄ちゃん」
「次は卵と巾着とはんぺんと…」
「わかった、順にな。で?そっちのお兄ちゃんは?」
お爺さんに話しかけられて、
「あ、…じゃぁがんもどき下さい…」
「あいよ。大根食べて皿出して」
手の平サイズよりも少し大きいこの皿に乗せてもらったおでん種を食べたら、カウンターに戻す。そして次を乗せてもらう。そういうシステムらしい。
目の前に置かれたお皿。
丸い大根から湯気が立ち上っている。
出汁のいい匂いもたまらなかった。
割り箸を手に取って、半分に割って。
大根は2つに分けて、片方にかぶりついた。
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