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2.
「それで、何でここに来るんだよ?」
「冷たいね、修くん」
「そうじゃなくて、せっかく日曜なんだから」
遊びに行けばいいだろ、と発注書の確認をしながら修くんが言う。
呆れられてる。
それはわかってる。
「だから、遊ぼうと思ったらキャンセルになったんだって」
「ふーん」
興味ないよね、そうでしょうとも。
俺も思うわ。
日曜日、暇ですることなくてバイト先の事務所でうだうだしてるなんてどうよって。
「ケーキバイキングがどうとか言ってたよな?」
「うん」
「それがキャンセルになったのか?」
「うん」
昨日のバイトの時、琉さんと話したのが聴こえてたらしい。
琉さんはケーキと聞けば食べてみたい人だから、どんなのがあって何が美味しかったか、後で教えてくれと頼まれた。写真も撮ってきて、と。
俺は二つ返事で引き受けて。
秋野と、お友達と、わいわい楽しくバイキングする気満々だったわけで。
それが1週間延びた。
だから、1週間後には行けるのに。
1週間って長い…
「暇で死ぬ…」
「冬馬…」
ついに修くんが振り返った。
「働いてくか?」
「やだ」
「………」
こういう駄々を、修くんは程よく聞いてくれる。嫌がらないし、うるさく訊いてもこない。
だから来ちゃうわけだよ。
「じゃぁ、コーヒー飲むか」
「飲む」
「淹れてくる」
そう言って立ち上がって、キッチンへ。
俺は、ソファで脚組んでふんぞり返ったまま。
ふと、秋野に見られたらめっちゃ怒られそうだな、と思った。
何となくだけど、礼儀とかそういうのにうるさそう。恩返しとか言うくらいだし、何か奢るたびに律儀に御礼を言うし。
何その格好、ちゃんとしなよ。
バイト先のオーナーにコーヒー淹れさせるの?とか。
「言いそう…」
想像したら笑えた。
「冬馬…、一人で笑ってると怖いって」
「あ、早いね」
「父さんが落としてくれてたから」
「琉さん、大好き」
差し出されたカップを受け取って、ついでにきちんと座り直した。
修くんは定位置の机の前。
「で?」
「ん?」
「相手は誰」
「ん?」
「キャンセルした相手は?女の子?」
「うん」
「へぇ」
「………何?」
何でちょっと笑ってるんだよ…
「あと15分、あるから…」
「?」
「それまでなら話、聴けるけど」
「………」
開店前の忙しい時間のはずなのに、いいの?
俺の無言の問に、にやっとして。
「お前、自分がどんな顔してるかわかってんの?」
そう訊いた。
「そんな顔してるの、珍しいからさ。正直、何があったかのか、どんな子が相手なのか興味ある」
「え…、どんな顔?」
「んー…。お預けされた犬?」
「酷!」
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