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といっても、どこから手を付けるべきだろう。
必要な書物などは今のアパートに持っていっているから、残っているのは黄ばんだマンガの山や一時期ハマったアニメのグッズの詰まったダンボール、いつかの勉強やスケジュール管理のノートの山。つくえとベッドはアパートに引っ越す際新品を購入しているから処分してもらうとして、このガラクタの山をどうにかしないと。
「どうにかって言っても、なあ」
いざ勉強ノートを開くと、懐かしさがこみ上げる。それでも勉強ノートなら捨てようと思えた。だがスケジュール管理のノートは当時の思い出がよみがえる。アニメの視聴記録や感想をまとめているページ、お菓子のおまけについてきたシールが貼ってあったりして、なんだかもったいない、という気持ちがわいてくる。
「持っていくのも面倒だけど、捨てるのも惜しいよな」
私はとりあえず捨てるもの(捨てられる気持ちのもの)と、保留のもの、アパートに持って帰ってでも捨てたくないものとで分けることにした。
お母さんから空きのダンボールを三つもらってきて、仕分け開始。
基本的には捨てるものと保留のもののどちらかに分けられていて、私も気持ちよく仕分けが進んでいた。
しばらくすると、厚みのある大きな本が二冊出てきた。同じようなサイズ感だけど、背表紙に書かれた文字だけ違っていた。
○○市立○○小学校
○○市立○○中学校
「卒業アルバムだ! なっつかしー」
卒業アルバム。思わず開いてみると、今でも鮮明なカラー写真がそこにはあった。
「小学生のときの先生とか、今ごろどうしてんだろう。おじさん? おじいさん?」
六年生のときの担任を見て私は「懐かしい」を連呼した。クラスの写真を見ると、当時の私はツインテールにしている。今じゃ恥ずかしくてできないけど、髪型ひとつで感慨深い。
「そう言えば、一緒に卒業文集ってあったよね」
私は卒業アルバムをいったん閉じると、アルバムが入っていたダンボールを漁った。それはすぐに見つかった。アルバムと同じ大きさの卒業文集が二冊。これもよく似たできあがりの二冊だった。
「私は何を書いたんだっけねエ」
小学生のころの卒業文集を開く。私の名前のページはすぐに見つかった。
〈将来の夢は医者になることです。薬剤師でも良いです。人の役に立ちたいです〉
「うわぁ、良いこと言うなあ。こんな子が今じゃこんな大人かあ」
私は恥ずかしさと、当時の夢と現実のギャップに耐え切れなくなって、すぐに卒業文集を閉じた。
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