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拓也は脱力したようにため息をつきながらそう言った。
私はと言えば、息子にキスシーンを見られ、どういう顔をしていいかわからずテーブルの上に突っ伏した。
「うん、なんか邪魔しちゃだめかなって」
小学三年生にして空気を読みすぎではないだろうか。恥ずかしすぎる。
拓也は仕切り直すように「秀也」と名前を呼んだ。秀也がやや照れた様子で拓也へ視線を向ける。
「俺を、秀也のお父さんにしてくれないか? 君と一緒に、お母さんを守りたいんだ」
「仲間?」
「そうだ、仲間だ……それで、家族になる」
「うん、べつにいいよ。僕、犬飼さんをお父さんって呼んだ方がいいの?」
「呼んでほしいけど、無理にとは言わない。急に俺を父親だって思うのも難しいだろ?」
拓也は苦笑しながら言った。十年父親がいない生活だったのだ。たしかに拓也をすぐに父親とは思えないかもしれない。
「そんなことないよ。お父さんがいたらこんな感じなのかなって、昨日ずっと思ってたから。ゲームの話とか楽しいし。お父さんのお仕事すごいね」
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