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秀也はピースサインを作って、にかっと笑う。笑った顔は拓也にそっくりだ。癖のない真っ黒の髪も、目鼻立ちの整った顔も。高校時代の少年っぽさを残した彼を思い出させる。
「寧子、今日は早かったのね。良かったわ~秀也くんの勉強、私じゃちゃんと見てあげられなくて」
リビングには、私の分の食事が用意されていた。
母には本当に感謝している。父を亡くしてから秀也が生きがいだと言ってくれるけれど、子どもの面倒を見るのは楽じゃないだろう。
「お母さん、いつもありがとね。疲れたでしょう? ご飯食べたら私たちは帰るから、ゆっくり休んで」
「そうさせてもらおうかしら。歳を取るとだめね、体力がどんどんなくなっちゃって。でもあなたも無理をしないのよ? なにかあったらすぐに言いなさいね」
「うん、わかってる。鍵かけて帰るから、もう休んで。おやすみ」
「おやすみ。秀也くんも、おやすみね」
「おばあちゃん、おやすみ~また明日ね」
私は母の作ってくれた料理を電子レンジで温め、食事をしながら秀也の話を聞いていた。もっぱら話す内容はゲームのことばかりで、聞き役に徹していると文句を言われる。
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