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あえて悪ぶった言い方で返すと、拓也は苛立った様子で自分の髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜた。
「冗談じゃないならなんだよ!」
「妊娠したの」
「は?」
別れを告げたとき以上に、拓也が驚いた顔を見せる。それはそうだろう。私だって、自分がまさか彼に妊娠を告げるなどとは露ほどにも思っていなかった。
「でも拓也の子じゃない。浮気した。それで……妊娠したの」
拓也の表情がくるくるとめまぐるしく変わる。彼は、まず妊娠と聞いて驚き、自分の子じゃないと聞いてほんの少し安堵していた。
もう覚悟を決めたのだ。彼の反応に傷ついたり泣いたりはしない。拓也が私を好きでいてくれたのは間違いないけれど、つい数週間前まで高校生だった男子の反応としては当たり前のものだ。
「浮気……? 俺以外と、やったの?」
そして最後に、私への怒りがやってくる。拓也は目を細めて睨むように私を見つめる。
私は平然と頷いてみせた。
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