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「そんなこと考えてたの?」
思わず笑ってしまう。雨宿りしたことで彼と長く一緒にいられた。そのことを喜んでいたのは私も同じだったから。
「受験前、大雪警報が出てる日にわざわざデートしようって誘ったのもそうだ。電車が止まって、お前が帰れなくなればいいって思ってた」
散々ケンカもしたのに、楽しかった思い出しか浮かんでこない。
「必死で背伸びしてたけど、まだ所詮十八のガキだったな。だからって十年の贖罪のためにプレゼントしようって思ったわけじゃない」
「じゃあ、なんで?」
「俺が、ただ着飾った寧子を見たいだけ」
拓也はスタッフが持ってきた服を手に取って、私の身体にあててくる。光沢のあるフレアワンピースは上品すぎて、私が着ると服に着られてしまうのではと思ったけれど、綺麗なものの前に自然と口角が上がった。
「どれも似合いそうだ。一枚ずつ試着してるとさすがに秀也が飽きるだろうから、この辺全部うちに送っておいてもらおう。今日着ていくのは……これにするか」
拓也はネイビーのワンピースを手に取る。ノースリーブで丸襟タイプのものだ。腰にベルトがついた細身のタイトスカートは足を細く長く見せてくれるだろう。
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