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あのとき私を選んでいたら、そうなる可能性だってあった。それを想像すると、自分の行動は間違っていなかったのだと思える。
過去は変えられなくとも、未来は自分たちで選べるのだから。もし彼が自分を選んでくれるなら、それに応えたい。
私はワンピースに着替えて、パンプスにそっと足を通す。パンプスは私の足にぴたりとフィットしたように履きやすくいくら歩いても疲れなさそうだ。
「よく似合ってる。バッグはこれかな。大きめのを選んだけど、全部入りそうか?」
「ありがとう。たぶん入ると思う」
荷物を入れ替えるならこちらへ、とスタッフに秀也が待つ部屋へ案内された。
「お母さん、綺麗!」
「こんな服着たことないもんね」
今まではおしゃれをする必要がなかったから自分に無頓着でいたけれど、秀也の笑顔を見ていると、たまにはいいかと思える。
(それに……好きな人の前では、やっぱり綺麗でいたいって思っちゃうし)
秀也を育ててきて、自分がどんなにぼろぼろの格好でも恥ずかしいと思ったことはなかったのに、彼の隣に並ぶことを考えると途端に恥ずかしくなる。この格好なら、並んでいても拓也に恥をかかせなくて済みそうだ。
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