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バッグの中身を入れ替えたところで拓也がやってきた。
「そろそろ行こうか」
「うん、ありがとう……嬉しかった」
「喜んでくれて良かったよ、ほら」
手を差しだされて、つい秀也をちらりと見つめる。
秀也は私が拓也と手を繋ぐことになんの疑問も抱いていない。いいのかと迷いながらも、拓也の手に自分の右手を重ねた。
「犬飼さんは、お母さんを守る仲間だから」
秀也はそう言って、私の左手を握った。こうして手を繋ぐのはずいぶん久しぶりだ。
「二人でお姫様を守るんだよな?」
拓也はキザったらしく手の甲に口づけまでしてくる。そして耳元に顔を寄せられる。
「夜、お姫様の服を脱がすのは俺の役目だから。確かめさせてくれるんだろう?」
私は恥ずかしくて顔を上げられない。頭に血が上ったように頬が熱を持っている。
今夜は秀也と一緒に拓也の家に泊まる予定だ。秀也は、拓也の家に行くことを純粋に楽しみにしているが、私はそれどころではない。
「あ、お母さん顔赤くなってる」
「もうっ、秀也はよけいなこと言わなくていいの」
店を出て車に乗り込むまで手は繋がれたままだった。
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