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大学への進学が決まっていたし、十八歳で子どもを産み育てるなんてできるはずがないと思っていたから。堕ろしたあと、拓也に言おうと思っていた。
でも、結局できなかった。
お母さんと一緒に産婦人科へ行ったとき、初めて赤ちゃんの心臓の音を聞いた。そのとき、お母さんも私も声を出さずに泣いた。
この子をこれから殺すのだと、その選択を医師に打ち明けるのだと思ったら、苦しくて、どうしようもないほど辛くなってしまった。
結果、産むことにしたけれど、お父さんもお母さんもなにも言わなかった。
「なんで……っ!」
拓也の悲痛な声が響く。公園内で遊んでいる子どもたち。一緒にいる母親たちがちらちらとこちらへと視線を向けてくる。あからさまに揉めているとわかる雰囲気だからだろう。
「もう行ってもいい? 寒いところにいると、お腹の子に障るから」
なるべく悪女に見えるように。悪いのは全部私だと彼が思うように。私は淡々と告げた。彼に責任なんて感じさせない。
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