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でも私は買い物途中です。てくてくと通り過ぎます。
「待ってって、リーア!」
タクトが追いかけてきました。でも私はてくてく歩きます。
「私は予定を遂行しています。あなたのことは予定にありませんので。」
「あの時は予定を変更して助けてくれただろう? 君がここに来るのを待っていたんだよ。」
私は立ち止まり、タクトの顔を見ました。背が高い。私は一五五センチです。多野さんの好みが伺えます。しかし問題はそこではありません。私は顔を上げて聞きました。
「……私の予定が漏れてると?」
タクトがにこりと笑いました。
「うん、ハッキング。」
「……。」
この特区の管理運営をしている、セキュリティでガチガチの教授宅のメイドの予定をハッキングなど、ありえません。私は普段外出しないので、今日の外出はイレギュラーです。外で会う確率は低く、さらにこの場所でピンポイントで遭遇する確率はゼロに近い。予定を知らなければ。
今日、おぼっちゃまの誕生日プレゼントとケーキを直接取りに行くのが私の仕事だと知っているのは、ご主人さまとお屋敷の管理システムだけです。
おそらくその管理システムをハッキングしたということなのでしょう。さらにこの男はお屋敷の敷地内にも侵入したのです。
しかも、そもそも住民でもないこの男がここに存在することがありえないのです。
状況を把握するため、しばらくフリーズします。
「リーア、僕の話を聞くまで通報しないでね。」
そう言いながらタクトが私の目の前に目の前に一枚の紙を出しました。
「はいこれ。」
[十三時から十三時半まで私はタクトと話をする。その後、ケーキを取りに行く。]
私は瞬きしました。
「予定の書き換え完了?」
改めてタクトを見ました。
タクトはにこにこしながら私の手を引っ張りました。
「じゃ、公園に戻ろうか。」
この男は何者なのか。
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