私はメイドアンドロイド

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私はメイドアンドロイド

 20××年。    数十年前に世界を巻き込んだ戦争が終結し平和な日々を謳歌している先進諸国では、少子化が止まらず人口減が続いています。現在、その不足した労働の担い手として作業用ロボットの活用が推進され、数多の検討ののち先端のAIが搭載され自立したアンドロイドの導入も検討されるようになってきました。  ロボットは主にアームだけ足だけ、あるいは救助や探索用の犬型などで人間(ヒューマン)が操作します。アンドロイドは人型で自立しています。  *  ここは日本にある特別行政区ソピア。過疎によりなくなった街の後に作られた、選ばれたセレブたちが住む新しい街です。ゆったりとした敷地に白亜の豪邸が統一感をもって並び、若葉が眩しい植栽が風にそよそよと揺れています。  まあ、その風が心地よいのかわからないとどうなのか私にはわかりません。  アンドロイドですので。  AIを搭載したヒューマン型ロボット、いわゆるアンドロイドに恐れを抱く人間(ヒューマン)たちにより、私のような者はアンドロイドとヒューマンの共生を目指したこの特区内でのみ見られます。  見分けがつくように、見た目はヒューマンですが肌の色は金属むき出しのような銀色と決められています。でも触れるとひんやりしていますが柔らかいんですよ。瞳の色は所有者が好きに決めていいので、私の場合は紫色です。  ちなみに、私はあるお屋敷のメイドアンドロイドです。リーアという名前で、十八才という設定の外見にくりんとした栗色のツインテールにメイド服。 『可愛い』のかどうなのか判断するプログラムが入っていないので自分ではよくわかりませんが、くりっとした目に長いまつ毛と小さめの口など、造形に作成者の好みが伺えます。  お仕えしているご主人さまの名誉のために言っておきますが、ご主人さまの趣味ではありません。  私のご主人さま、斎木(さいき)透さまは大学の教授で奥様を早くに亡くされ、十二才の息子さんと二人家族です。  この特区ソピアは桁外れのお金持ちしか住めないのになぜ一大学教授の斎木さまが住んでおられるのかというと、この特区の管理、運営をする中央センター所長というお立場だからです。    私を作ったのは、ご主人さまの助手の多野(たの)さんです。ちょっと照りっとした感じの男性で、いつも私を見ると「リーアちゃん可愛い〜。」と言います。私は『可愛い』と言われると「ありがとうございます。」と返事をするプログラムが組み込まれていますので「ありがとうございます。」と返事をします。すると多野さんは少し寂しそうな顔をします。多野さんの最初のプログラムでは「ありがとうございます。」の前に「きゃっ♡」が入っていたのですが、皆さんから「必要ない。」と指摘されて泣く泣く削除したらしいです。  しょぼんとした多野さんを、もう一人の助手の女性、藤宮(ふじみや)紫衣(しえ)さんが目を細くして嫌そうに見ます。    紫衣さんは長い髪の毛を後ろで一つにまとめた、テーラーカラーのジャケットが似合う長身の美人です。照りっとした多野さんとは対照的です。  紫衣さんは調整部門のリーダーです。システム管理のリーダーが多野さんで、紫衣さんは住民の生活に関する責任者です。ヒューマンの生活もですが、その補助となる私たちアンドロイドの面倒も見てくれます。    多野さんと紫衣さんは私を「リーアちゃん」と呼んでいつも優しくメンテナンスしてくれます。
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