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色々と自分の理想を私に詰め込んだ多野さんですが顎の下で両手をきゅっと握って「お帰りなさいませ、ご主人さま♡」と言うプログラムは、眉を顰めたご主人さま(斎木教授)により手をエプロンの前で重ねて平坦な声で発声するようにプログラムを書き換えられました。そのほかも色々修正されて多野さんは悲しそうでしたが、上司である教授のすることに反対することはできなかったようです。
さて、斎木さまのお屋敷には私のほかにもハウスメイドのマーサ、コックのごんさん、警備用とアンドロイドが何体かいますが、私はご主人さまの息子さん、律さまのお世話係です。
ちなみに、ごんさんの本当の名前(商品名)はボブなのですが、コックというより板前のような外見により、おぼっちゃまが「お前の名前は権田原だ。」とおっしゃったので、わがお屋敷では「ごんさん」になりました。
*
「おぼっちゃま、朝です。起きてください」
シャーッとカーテンを開けるとまばゆい朝日が差し込みます。そして窓を開けると風が入りこみます。
「おぼっちゃまはやめろ、もうすぐ十三才だ。それに寒い! まだ四月だ!」
「ではご主人さまにプログラムを書き換えていただけるように要請してください。本日の予定を申し上げます。」
「聞いてるのか、リーア!」
なんで三月までは僕がご飯に行ってから窓を開けるのに四月に入った途端すぐに窓を開けるんだ、とぶつぶつ文句を言っています。
そうプログラミングされているので仕方がないです。
私の中には既に今後五年間のざっくりとした予定は入っていますが、毎月の予定が入ったメモリを月末に首の後ろにあるポートから読み込ませます。予定が急に変更になった時は紙に書いたものを瞳に内蔵されているカメラで読み取ります。
全ての予定が瞳から入るといいのですが、あまり予定が多いと書き替え中にこんがらがってしまうのです。
今のところ私に入っているのは、おぼっちゃまとご主人さまの予定だけですし、おぼっちゃまの予定は学校、塾、習い事だけなので瞳から入れても問題はありません。
ですが、大家族であったり、多忙なセレブ達の予定がこんがらがってはいけないので、メモリから読み込む方が確実なのです。
しかし、おぼっちゃまが学校から帰ってから急に「友達と遊んでくる!」と飛び出して行かれると少しパニックを起こします。
「おぼっちゃま、どなたと、どこへ、いつお帰りですか!?」
「うるせえ!」
「本日はご主人さまがーー。」
おぼっちゃまは最後まで聞かず飛び出して行かれました。
おぼっちゃまは最近になって急激に身長が伸び、私を追い抜きました。そのせいか私に対する言葉遣いも荒いものになっています。
過去のデータに照らし合わせてみると、おぼっちゃまは思春期というものらしいです。対処プログラムをご主人さまが作成中ですが、対応を間違えると拗らせるそうで慎重に考えているそうです。
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