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「お帰りなさいませ、ご主人さま。」
エプロンの前で手を重ね、軽く頭を下げながらご主人さまをお迎えします。
「ああ、ただいま、リーア。でも着替えを取りに帰っただけなんだ。」
「はい、マーサがダイニングに用意しております。あと簡単なお弁当と食料も用意しております。」
ご主人さまはほとんど特区の管理施設である中央センターに詰めており、大学の講義にも行かれるためなかなか帰宅されることはありません。
「ありがとう。律はどうしている?」
「ご友人と遊ぶと出ていかれました。帰りは未定です。」
「相変わらずだなあ。ま、来週の誕生日には顔を合わせることができるだろう。」
ご主人さまはシャワーを浴びる準備をしながら、少し寂しそうに「ははっ」と笑いました。
お忙しいご主人さまと外出しがちなおぼっちゃまとは、あまり会うことはありません。しかし、ご主人さまはおぼっちゃまが在宅であろう時間を選んで帰宅なさっているのです。
本日は塾も習い事もありませんから。
「ああ、そうだリーア。律の誕生日のことなんだけど、プレゼントの取り寄せが前日の夜になるようでね。当日の朝に取りに行ってもらいたいんだ。ここに書いてあるから読んでおいて。」
「はい、かしこまりました。」
「仕方がないこととはいえ、ソピアがこんな僻地で不便なこともあるね。」
ご主人さまはため息混じりにおっしゃいますが、商品の到着がギリギリになったのはおぼっちゃまが欲しいものをなかなか決めなかったのが原因です。
私は紙に書かれた予定を読み取り、ゆっくり瞬きをしました。これで書き込み完了です。
*
ご主人さまが再び中央センターに行かれた後、入れ替わるようにおぼっちゃまがお戻りになられました。門限を少し過ぎています。
「宿題を三十分以内でしないと就寝時間に間に合いません。」
「わかってるよ、うるさいな。」
なんだかもじもじしています。
「おやつは宿題の後です。」
「違うっ。」
違いましたか。
「……あのさ、父さんは?」
「おぼっちゃまの帰られる十分ほど前に出られました。」
「ふうん。」
「宿題を……。」
「もうっ、わかったって!」
早く思春期対処プログラムを完成していただきたいです。
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