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18
冬哉は椅子に座る秀の顔を覗き込むと、彼は前髪の奥から真っ直ぐ見つめ返してきた。心臓がドキドキして、秀にも聞こえてしまうんじゃないかと思い、胸を押さえる。
「秀くん……キス、しよ……?」
緊張で声が震えた。
「……メシは?」
やっぱり変わらない表情で聞いてくる秀を無視して、冬哉は椅子に座る秀の太ももを跨いで、彼の足の上に座った。彼の首に腕を回し、そっと唇を合わせると、柔らかなそこは拒否せずに冬哉を受け入れる。
「……ふふっ」
冬哉は嬉しくて、もう一度唇を合わせる。今度は少し吸ってみた。小さな音がして離れると、冬哉の身体はそれだけで熱くなってしまう。
「秀くん、好き……」
秀が拒否しないことをいい事に、冬哉はそこに何度も口付けた。角度を変え濡れた音を立てながらそこを吸っていると、冬哉の分身が硬くなっていくのが分かる。はぁ、と息を吐いて秀を見ると、彼はやはり顔色一つ変えずに冬哉を見た。その真っ直ぐな視線にゾクッとしてしまい、冬哉はとうとう我慢できなくなってしまう。
「秀くん、僕の事……好き?」
「……うん」
こんな時でも落ち着いた声が返ってきて、冬哉は悔しくて秀の唇を舐め、隙間から舌をねじ込む。この冷静な顔を何とかして歪ませたい、そんな気持ちが出てきて、自ら秀の舌に自分のそれを絡ませた。
そこまでしても、秀は椅子に座ったままの体勢で冬哉に触れようとしてこない。自分ばかりが高まっていくのは恥ずかしくて、片手を秀の下半身に伸ばした。指先が秀のズボンに触れた途端、冬哉のその手は秀に掴まれ、彼の分身がどうなっているのか確認する事は叶わなかった。それと同時に秀のもう片方の手が、冬哉の後頭部を支え、グッと引き寄せられる。
「……っ、ん……っ」
ビクリと冬哉の肩が震えた。秀の熱い舌が、冬哉の口内で暴れ、蹂躙する。敏感な冬哉は舌が絡む度、感じる場所を舐められる度に身体をビクつかせて、とうとう身体の力が抜けてしまった。唇が離れた時にかろうじて秀のシャツにしがみつくと、今度は首筋に唇を這わされ、服の中に大きな手が入ってくる。
「ぁ……っ、し、秀くん……っ」
首筋の舌の熱さと濡れた感触、そして直に肌に触れた手に大きく身体を震わせると、誤魔化しようもなく甘い声が上がる。
(ち、ちょっと……、秀くんこれが初めてだよね!?)
冬哉の感じる所を的確に攻める秀に戸惑いながら、冬哉は何とか秀の下半身に手を伸ばす。しかしやはり、それに気付いた秀に阻まれ、服の中に入った両手で冬哉の胸の突起を弾かれた。
「……っ!」
冬哉の身体が一際大きく震える。そのままそこを弄ばれて、ゾクゾクが止まらなくてきゅっと内ももに力が入った。
「あ……っ、んん……っ」
顔が熱くてじわりと涙が滲む。うっすらと目を開けると、快感に耐える顔を見られてると意識してしまい、それすらも興奮材料になった。秀はやっぱり冷静な顔のまま、冬哉をじっと見ていて、その真っ直ぐな視線にさえゾクゾクする。
「あっ、秀くん……っ、気持ちい……っ」
気持ちいい、好き、ともう一度言うと、内腿が震えてギュッと締め付けるように硬直した。同時に一瞬頭の中が真っ白になり、感じたことのない快感が通り過ぎる。
「んんん……っ、……っあ!」
余韻に身体を震わせていると、冬哉は恥ずかしくなって秀の肩に顔をうずめた。今のはもしかして、と思うけれど、じっくり考えている余裕はない。
「し、秀くん……、本当に、初めて?」
「……どうして?」
秀はそう言いながら、冬哉の背中を宥めるように撫でてくれた。どうしてと尋ねられても、何となく答えるのは嫌で、冬哉は黙って秀のズボンに手をかけようとする。しかしやっぱりその手は秀に捉えられ、いくら力を入れてもビクともしない。
「ちょっと秀くん? 何で触らせてくれないの」
「俺はいい」
「何、で……っ、んん……っ」
冬哉の抗議の声は、秀が掴んだ腕を引っ張り唇を塞がれた事で飲み込まれた。秀の舌が下唇を舐め、冬哉の舌先を掠めると、腰の辺りがゾクゾクして唇が離れてしまう。先程まで動こうとしなかったのに、急に積極的に触れてくる秀に戸惑い、それでも興奮を止められず、秀の愛撫に翻弄される。
「……っ、ああっ」
いつの間に下着の中に手が入っていたのか、冬哉は気付かずびっくりして声を上げた。熱くなった分身を狭い下着の中でゆるゆると扱かれ、かくん、と頭が再び秀の肩に落ちる。
「あっ、あっ、……秀くんっ、だめ……っ」
冬哉は秀の肩口でふるふると首を振った。身体が小刻みに震え、ギュッと秀にしがみつくと、嫌なのか? と冷静な声が聞こえる。
なんて意地悪な質問をするんだろう、と冬哉は秀にしがみつく腕に力を込めた。でも秀の手は止まらず、焦れったい快感がもどかしさとなって、つい腰を動かしてしまう。
「すごく、いいけど……恥ずかしいよぉ……」
冬哉は身体を起こして、涙目で秀を見た。彼は手を止めたけれど、やはり感情を乗せない顔でこちらを見ている。少しは変化があってもいいじゃないか、と冬哉は思うけれど、ここまできても無表情なら仕方がないか、とも思う。
「……秀くんは? 触らなくて良いの?」
上擦った声で秀の頬を撫でると、彼は目をゆっくりと伏せ、とりあえず冬哉から、と言った。とりあえずってどういう事だろうと思っていたら、移動しないか、と言われる。
移動とは、と考えて至った答えに全身が熱くなったけれど、それ以上に下半身の熱をどうにかしたくて、素直に秀の膝の上から退いた。
「そっ……ソファーでいいかな……っ?」
「うん」
二人は並んでソファーに座る。するとすぐに視界が回って、秀に押し倒されていた。
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